日本は技術で勝ってビジネスで負ける

 

 我が国は技術開発では先行するものの、製品化やサービス化で後れを取ってビジネス展開で外国企業に敗れ去るという、多くの日本企業に共通する現象がここ20年以上続いています。あるいは製品化でも先行したものの、後発の外国企業にあっさりと逆転されるという事例もある。シャープの例を挙げさせて頂ければ、急速に普及している有機ELディスプレィ/テレビはその最たる例だし、電気自動車もそのパターンに陥りつつあります。

 負ける原因の一つの例

 ビジネスで負ける理由としては日本ではいくら革新的なアイデアを企図しても先を見通すことの出来ない極言暴論かも知れないが、中間管理職が稟議を握りつぶしたり良くともスモールビジネスでの具現化しか出来ずちまちましたビジネスを選択することしかサラリーマン社長やサラリーマン社員に出来ないからであろう。
ビジネスが本当に有望なことが明らかになった場合も、大幅な先行投資に踏み切れない。「堅実な成長」などと思っていたところを外国企業が大規模投資に踏み切り、一気に市場を覆す。これを称して「技術で勝ってビジネスで負ける」というわけなのです。

 今までこの現象は下記の例や企業からしても明らかだと思われる。

1 DVD プレーヤーや DRAM メモリーなど日本発の製品が 2000 年代以降世界で大量に普及している。それに伴い、これらの製品における日本企業の世界シェアは急速に低下している。

2 日本企業の競争力が低下した背景に、摺り合わせ型製品がモジュラー型に転換したことを受けて 欧米と新興国企業がモジュラー型製品について国際分業したことが挙げられる。そのため、規模 に劣る日本勢は不利になり、また、保有する大量の特許も楯とならなかった。

成功例としては

3 DVD メディアでも日本勢は不利な立場に立たされているが、その中で唯一、高収益を実現した 企業が存在する。三菱化学メディア(株)である。同社は色素材料や製造レシピを販売するなど製 造プラットフォームビジネスを新興国企業に展開し、大量普及と収益拡大を達成した。

4 三菱化学メディアは DVD メディアの国際規格に自社技術の刷り込みに成功し、ブラックボックス 化した色素材料などからビジネス全体をコントロールする仕組みを作った。

5 インテルやノキアが強い理由は、バリューチェーンの特定階層のブラックボックス化と標準化を 駆使したビジネスモデルを展開していることにある。さらに彼らはライバル企業の標準化の企て には徹底的に争い、決してライバル企業に技術の改版を許さない。このような知財マネジメント を実施している企業は日本では見当たらない。

6 日本企業は新興国企業と争うのではなく、そのパワーを活用するべきであり、そのためには、大量普及 と収益拡大を図る仕掛けを作るソフトパワーを身につけるべきだ。

7 特に、部品・材料メーカーは特定階層の知的財産を独占しやすく、プラットフォームビジネスを展開し やすい立場にある。日本の部品・材料メーカーは今こそ受身姿勢の単品ビジネスから積極的なプラット フォームビジネスを展開するべき時ではないか。

8 海外製薬メーカーは材料の開発から収益の確保までうまく進め ているのではないか。その典型的な成功例を 製薬メーカーのビジネスに見ることができる。 現代の医薬ビジネスは創薬から治験まで時間 と費用が莫大にかかり、一社で賄うことはできない状況だ。そこで、1980 年代以降、米国の製薬メーカーは医薬ベンチャーをビジネス モデルに組み込み、開発費と創薬リスクを分け合うオープンイノベーションモデルを定着 させた。 一方、そういったビジネスモデルを持たな かった日本の製薬メーカーは欧米に比べて決 定的に弱体化してしまった。

近年、日本の産業競争力は急速に衰えているといわれている。しかし、スイスの国際経営開発研究所(IMD)が発表する「World Competitiveness Yearbook 2010」によると、日本は科学論文数や研究開発費などの評価項目(科学インフラ)で、世界第2位であり、技術力指標の一つである国際特許出願件数も、米国に次ぎ世界第2位である。、それなのに日本企業は、なぜ事業展開においてその競争力を十分に生かしきれていないのか、なぜ事業で勝てないのか、という問題意識に基づいて発想を変えて事業計画を考える必要がある。

*ポイント

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